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前回の最後に挙げた、「企業が解散することはほとんど無い話なのだから、解散価値を計算しても無意味」という意見について考えてみます。
まず、複雑な事象を解明しようとするときは、なんらかの単純なモデルにまで抽象化して考えるのがスジです。理系の人は高校の物理の時間にニュートンの運動方程式など解いたことかと思いますが、最初は摩擦や空気抵抗の無い理想的な状態を想定したはずです。現実の世界ではそんな話はあり得ませんが、話をそこから始めて、後から必要な要素をつけ加えていくことによって現実に近いモデルがようやくできあがるというものです。
数学の時間にやった図形の問題にしても、点や線は一切の面積や太さを持っていないという前提です。現実の世界ではあり得ない話ですが、建築をはじめとして様々な分野で役立てることができます。さらに、17世紀の政治哲学者であるトマス・ホッブズやジョン・ロックらは社会や国が存在しない、身分の上下も無い、すべての人が平等で自由な状態を「自然状態」として抽象化し、後の民主主義や資本主義の思想に大きな影響を与えました。
企業の解散価値にしても同様に、最初は単純化して考えることが有効であり、そこを出発点として様々な要素を加えていくわけです。解散価値が時価総額を下回っているから、その株を買えば必ず儲かるというわけではありません。このような銘柄をいくつか集めたポートフォリオがどのようなパフォーマンスになっているかを調べる。さらに、利益の継続性や安全性のパラメーターを付け加えることで儲かる確率が高くなるかどうか確認する。また、どのようなタイミングで買付ければよいのかを見極める。このような検証作業を行うことで、現実の投資に有効なモデルへと近づけていくことが必要だと私は考えています。
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